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日本が誇るEDM界のホープ、banvoxが昨年の6月に公開した動画「ニュー・スタイル [コンセプト・ムービー]」の舞台は、渋谷のスクランブル交差点であった。そこには、交差点を撮影しようと海外から訪れたツーリストたちが数多く映り込んでいる。この交差点において、こうした光景は日常的に見られるものだ。確かにユニークなスポットではあるが、数年前までは、ここまで観光名所でもなかったはず。多くの人を引き付けるその魅力はどこにあるのだろうか?

単純に言ってメディアの影響も強いだろう。象徴的なのは、2004年に日本でも公開された映画「ロスト・イン・トランスレーション」だ。東京を舞台に、倦怠期のハリウッド・スターと、孤独な若いアメリカ人妻による出会いと別れを描いたこの作品では、渋谷のスクランブル交差点が繰り返し登場する。とくに、ビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンが手を取り合って夜の交差点を駆け抜けるシーンは印象的だ。また、東京の名を冠した2006年の映画「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」では、主人公たちが渋谷のスクランブル交差点で豪快にドリフトを決めているし(CGだが)、2010年公開の映画「バイオハザードIV アフターライフ」では、交差点の地下でアンブレラ社が巨大な要塞を築いてT-ウィルスを製造していた。

こうした映画やドラマをきっかけにして、
渋谷のスクランブル交差点を訪れたいという旅行者が増えたのは間違いない。
ならば、なぜこうした作品を作ったアーティストたちは、この地を舞台に選んだのだろうか。

渋谷は、その名が示す通り、谷の街だ。この交差点を含む駅周辺は、渋谷の谷底に位置している。交差点から放射状に延びていく道は、いずれもその先に上り坂が待ち構えており、家路を急ぐ人たちでごった返す時間になると、まるで上流から下流へと水が流れるようにして、さまざまな人がこの交差点に流れ着く。渋谷の谷底に位置したこの交差点は、自ずと様々なカルチャーが流れ込む場所になっているのだ。ミックスカルチャーのスープが顕在化したようなこの場所を、ミュージックビデオの舞台に選ぶ海外アーティストは多い。ミューズによる「パニック・ステーション」のビデオは、渋谷の混沌をそのまま切り取ったかのような内容で、この記事にピッタリだ。日本にもファンの多いカーリー・レイ・ジェプセン。2015年7月に公開した「ラン・ウェイ・ウィズ・ミー」のビデオで、この地を撮影に選んでいる。楽しそうに歌い踊りながら交差点を横断する彼女だが、それを意に介さず、歩きスマホに夢中の若い男性とぶつかりそうになるのが印象的だ。

現在、渋谷は再開発の真っただ中にある。2027年度内の完成を目指して、50年に一度、100年に一度の生まれ変わりを、現在進行形で行っているのだ。渋谷スクランブル交差点の魅力もまた、目まぐるしく変化していくだろう。この場所はしばらく、「訪れるたびに変化し、いつも新鮮な驚きに満ちた観光スポット」として、人々の注目を浴び続けるはずだ。

REPORTER

RYUTA TOMIYAMA
r.c.o.inc.代表。好きな食べ物はナン。好きな女性は飯島愛。好きな言語はJavascript。座右の銘は「もうしょうがない人ねぇ」。