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10月に公開された映画「何者!」。平成生まれの作家として、初めて直木賞を受賞した朝井リョウのベストセラー小説を映画化した作品だ。ここで描かれているのは、就職活動を通じて“自分が何者なのか”を模索する大学生たちの姿である。

就職活動は過酷だ。多くの会社にエントリーし、多くの会社に断られる。努力が結果に繋がらないのは当たり前。能力が高いから認められるわけでもない。“人生は思い通りに進まない”という現実を、正面から受け止めるイニシエーション……といったら言い過ぎだろうか。

いや、傍から見ていると、やはり“シューカツ”は儀式的である。全員同じリクルートスーツを着るのはもちろん、切ったり染めたりして、髪型すらある種のパターンに合わせていく。そんな就活生の姿を指して、「スターウォーズのストームトルーパーのようだ」と揶揄する人たちもいる。しかしなるほど、ストームトルーパーはクローン兵やロボット兵でなく、人間の志願兵や徴募兵なわけだから、言い得て妙ともいえる。

現代の若者は、ストームトルーパー化するこの儀式に何を求め、何を得ているのだろうか。シューカツを終えた人、これからシューカツを迎えるZ世代に話を聞いた。

先輩や友達を見ていると“何かしないと”って思う(21歳・Mさん)

来年度に就活予定の大学生、Mさん。2016年9月現在、彼女はすでに就職活動のスタートを切っていた。

「早くインターンに行かないと……と焦っています。でも、5日間のインターンとかだと、エントリーシート(以下・ES)も必要だし面接もあって、これがなかなか大変なんです」

言わずもがな、インターンとはインターンシップの略称である。本来的には、学生に就業体験の機会を提供する制度だが、今やその在り方が変化。「インターンに行かないと、内定がもらえない」と噂される企業が存在するほど、“内定”に近づく重要な鍵となっているそうだ。

「先輩には、“インターン行けば他の就活生を知れるし、モチベーションも上がる”って言われました。でも、周りの空気にのまれて、嫌になる自分を想像できる。正直行きたくないけど、インターンに行って実際受かったという友達もいるから、“私も何かしないと”と焦っています」

「15社エントリーした」って盛って話してます(21歳・Aさん)

「就活はとにかくつらかった。先輩から“自己分析しろ”とか“自分の強みを探せ”って言われて、嫌気がさした。自分に強みなんてないなぁって。どんな仕事がしたいというのもないから、勤務地とか給料で判断して、6社にエントリーしました。でも、周りは20とか30とか当たり前で、だから友達には、“15社エントリーした”って、盛って話してましたね(笑)。最終的に内定は3社からいただきました。早く就活を終えた友達にESを見てもらってから、うまくいくようになった気がします。ESや面接では、“企業が求める自分”を作らないといけないのがつらかった。就活は終わったけど、本当にその会社で頑張れるか不安だし、そもそも働きたくないっていう思いが強いです」

Aさんに、「もう一度就活できるか?」と聞くと、こう答えてくれた。

「絶対無理。だから、決めた会社で続けられるように頑張るしかありません」

やりたいことがあるから、それに向かって頑張れた(22歳・Uくん)

9月現在、いまだ就職活動中である大学4年生のUくんにも話を聞いた。彼は、人が羨むような大手企業4社から内定をもらっているが、まだシューカツを続けている。

「夢はパイロット。だから、そこに向かって、最後まで頑張りたいですね」

そう語る彼は、大学3年の夏に航空会社などのインターンへ参加。そこから就活を始めたという。

「選考を兼ねていた企業もあったので、インターンは積極的に参加しました。選考に落ちたときは“厳しい世界だな”って感じたけど、“もっと頑張らないと”って燃えたりもして。大学の講座で知り合った広告代理店の方にESを見てもらったので、書類で苦戦することはなかったです。あとはインターンで知り合った人と、試験対策を一緒にできたのも良かった。就活には、人脈も大切だと思いましたね」

Aさんと同じように、“もう一度就活ができるか?”と聞くと、彼の返事はこうだった。

「できます。むしろやりたいです。どういう風にやればいいか学んだから、イチから再挑戦したい」

自分を知る儀式/変える儀式/受け入れる儀式

インタビューを通じて面白かったのは、AさんとUくんの対照的な姿だった。Aさんは、 “企業が求める自分”を作ることに、強い抵抗を感じていた。一方のUくんは、「自分に適性がないなら適性を作りたいし、やりたいことができるように自分を変えていきたい」と、社会に適応することを前向きに感じている。

自分が思う自分を知る事。他人が思う自分を知る事。自分に足りないものを知る事。自分を変える努力をする事。変わった自分、変わらなかった自分を受け入れる事。

自分、自分、自分。

シューカツは、“企業”という名の社会と向き合う前に、「まずは自分と向き合え」と、学生を突き離す。いわゆる“自分探しの旅”へ強制的・受動的に旅立たせられる儀式、それがシューカツなのだ。その時、自分の中に確固たる自分があれば、シューカツを前にしてひるむことも意気込むこともないのかもしれない。しかし、「その“確固たる自分”で、本当に良いの? 別の可能性、別の人生、別の“確固たる自分”もいるかもよ?」と、周囲の誰かが、企業が、社会がささやく。でもそのささやきは、優しさかもしれない。

少なくとも、これは言える。「自分と向き合ったことがない」人にとって、シューカツは人生における大事な儀式となるだろう。正面から自分と向き合う、大切な時間だと前向きにとらえることもできるのではないだろうか。

REPORTER

RYUTA TOMIYAMA
r.c.o.inc.代表。好きな食べ物はナン。好きな女性は飯島愛。好きな言語はJavascript。座右の銘は「もうしょうがない人ねぇ」。

PHOTOGRAPHER
MEGUMI TANAKA