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SNS全盛の今。Instagramで公開した作品が話題を呼び、そこから活動の幅を広げる若手クリエイターが増えている。1990年生まれ、湘南出身の女性イラストレーター・little funny face(リトルファニーフェイス)も、その1人に数えられるだろう。

大学時代に服飾を専攻していた彼女が扱う画材は、ファッション画の制作で慣れ親しんだというコピックマーカー。ポートフォリオ代わりでもあるInstagramのタイムラインには、“異国情緒”と“日常性”が混在した、個性的なイラストが並ぶ。良い意味で“日本離れ”した作風で、国内外を問わず若い世代の支持を集めているそうだ。

活動開始から2年目となる今年は、下北沢の秘密基地的シェアスペース「レインボー倉庫」や、奥渋谷にある出版と小売が一体化した書店「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(SPBS)」で個展を開催した。

さらには、藤沢を本拠地とするストリート系セレクトショップ「Lafayette(ラファイエット)」とコラボレーションを行うなど、精力的に活動中のlittle funny face。彼女が描き出す作品の世界を、もう少し覗いてみよう。

“Big booty(大きなおしり)”と“だらしない日常”

イラストの主なモチーフは、さまざまな人種の女の子たち。どの女の子も“Big booty(大きなおしり)”で肉感たっぷりに描かれているが、不思議といやらしさは感じない。健康的なエロティシズムだ。

しかし、はつらつな肉体とは裏腹に、女の子たちの日常はちょっぴり不健康気味。カウチに寝そべりながらポテチを食べたり、浴槽でタバコをくゆらせたり、ベロベロに酔い潰れたりetc. “だらしない日常”が作者独自の目線で切り取られている。女の子たちの怠惰な姿を見て、「自分の日常もこんな感じだ……」とシンパシーを感じる人も多いだろう。恥ずかしながら、かくいう筆者もそのクチである(笑)。

作風のルーツはニューヨークに

そんなユニークな作風について本人に尋ねたところ、ルーツは4年前に1人で旅行したニューヨークにあるという。当時宿泊した場所は、マンハッタン北部に位置するハーレム地区。移民が多いエリアで、日本人観光客は少なかったそうだ。失業率が高く、治安もあまり良くない。しかし、そんな背景があっても、街の人々はみんな楽観的に過ごしているように見えたという。

「日中からアルコールを片手におしゃべりしていたり、道端にただのんびり座っていたり。人目をあまり気にせず自由に過ごす人々の姿に、大きな魅力を感じました。そんな空気感を絵にしているから、“異国情緒”と“日常性”を同時に感じてくれる人が多いのかもしれませんね」と彼女は語った。ローカルなアメリカをじっくり観察した経験が、作品に強く反映されているようだ。

さらに、こうも話していた。

「ニューヨークでは、体型が太めでも、タイトな服を着ている女性をたくさん見かけました。堂々と自分の好きなファッションを楽しむ姿が、とても格好良く感じたんです。女の子たちをモデルのように細く描かなくなったのも、それがきっかけ。 “ありのままこそ素敵”だと、作品を見た人に伝えられたら嬉しいです」

国籍の境界を取り払ったような、自由な雰囲気をイラストで表現するlittle funny face。下記のInstagramアカウントにアクセスすれば、多くの作品を閲覧できる。気になる人は要チェックだ。

little funny face

イラストレーター。1990年神奈川県藤沢市生まれ、東京都在住。2014年末より、Instagramで作品を公開。“Big booty(大きなおしり)”な女の子たちの“だらしない日常”を描き、男女を問わず若い世代の支持を集める。2015年には自身のホームタウン藤沢で、2016年には下北沢と渋谷で個展を開催。さらには、多数のアパレルブランドとコラボレーションを行うなど、活動の幅を広げている。