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仏像を制作する職人、仏師(ぶっし)。スマートフォンの画面が無数にきらめき、街からはEDMが鳴り響く、現代の東京にも仏師が存在すると言ったら驚くだろうか。彫刻家・加藤巍山は、現代仏師界のホープと呼ばれる存在だ。

仏の姿を形作ってきた仏師という存在

歴史の授業を思い出してみよう。日本に仏教が伝来したのは6世紀の中頃である。当時の日本で、仏教は“海外からやってきた最先端の宗教”であり、文化、ファッションであった。いわば“トレンド”だったのだ。その中で活躍する仏師たちは、如来や菩薩、明王といったさまざまな仏の姿……、かみ砕いていえばヘアスタイルやファッション、ポージングを形にしていたという意味で、最先端を行くクリエイティブな人々だったといえよう。

ワンフェスに並ぶフィギュアに興奮できるなら、もっと仏像にも注目してみると良い。仏師たちの想像力と技が込められた仏像にも、あなたを魅了する何かが見出せるはずだ。「では、どんな仏像を見たらよいのか?」という質問には、彼の名で応えたい。彫刻家・加藤巍山(かとうぎざん)。現代仏師界のホープと呼ばれる存在だ。

スピーディな東京で、時間間隔を失わせてくれる
加藤巍山の仏像

高村光雲(上野の西郷隆盛像を作った人物)の流れを汲む仏師の下で修業を積んだ後、38歳で独立した加藤巍山。彼の作品は、金に朱色と鮮やかで豪奢な仏像と一線を画す。クスやヒノキの素材を生かした静謐な作風、それでいて躍動感のある造形は、コンテンポラリー・ダンスを想起させるような現代性を兼ね備える。静と動でいうと、彼の作品は「静止した動」といったところ。一瞬なのか永遠なのか、見ているこちらも時を失う感覚に陥る。

Facebookページを見ると(現代の仏師はFacebookを活用する)、自身を評して「手が遅い」「何故こんなに時間が足りないんだ」と投稿されていた。しかし、仏像たちと1対1で対峙し続ける作業において、一般的な時間感覚を保ち続けるのが容易でないことは想像に難しくない。彼に制作時のこだわりを聞くと、このような答えが返ってきた。

「眠かったり、怠かったりといった、明快でない思考のなかで導かれた形を信用していません。だから同じ時間に起き、同じ時間に休憩し、同じ時間に寝ることを大切にしています。私には、私の作品を千年、二千年の未来へ伝えるという意志がある。百年というのが最低の時間的単位です。そこに妥協は許されません」

インスタグラムや6秒動画のヴァインで瞬間を積み重ねていく、21世紀的な時間感覚とは全く異なる時の流れが、彼の仏像・彫刻には宿っている。だからこそ、その存在が際立って映るともいえよう。実際に加藤巍山の作品を見てみたいという方は、今年の8月に日本橋三越本店で行われる「ざ・てわざ展Ⅲ」、10月に大阪高島屋で行われる「二人展」で、その機会を得られるとのこと。現代の仏師が生み出す美を、ぜひ間近で感じてもらいたい。

加藤巍山 - Gizan Katou

1968年東京都生まれ。高村光雲の流れを汲む仏師・岩松拾文の下で修業を重ねて独立。仏像のみならず、日本の古典や歴史を題材とした作品を多数制作している。
2011年3月11日の東日本大震災で被災した地域に、新たな仏像を奉納しようという「-縁-<ENISHI> 仏像奉納 PROJECT」を手掛け、仏師・三浦耀山とともに活動を継続している。

REPORTER

RYUTA TOMIYAMA
r.c.o.inc.代表。好きな食べ物はナン。好きな女性は飯島愛。好きな言語はJavascript。座右の銘は「もうしょうがない人ねぇ」。

PHOTOGRAPHER
Junichi Takahashi