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1989年から19年間、NYで過ごしたフォトグラファー、たかはしじゅんいち。2009年には雑誌「Newsweek(日本版)」で、「世界で尊敬される日本人100人」に選ばれている。ポートレイト撮影を得意とし、これまで坂本龍一や中田英寿といった“世界”の日本人をはじめ、ロバート・デ・ニーロ/イーサン・ホーク/ジェニファー・ロペス/マックスウェルなど、エンターテイメント業界やファッション業界において、さまざまな人物をファインダーにとらえてきた。トヨタやソニーといった世界的企業の広告写真も手掛けており、広告の世界で自然と、彼の写真を目にしてきた人は多いだろう。彼はまた、プライベートな作品も数多く制作している。2015年秋には、日本橋髙島屋及び新宿タカシマヤ美術画廊において、写真家・髙橋恭司と二人展を開催。この展示会で彼が披露していた連作「The Introspection 内観の刻」は、静寂のなかで張り詰めた空気を感じる、とてもコンセプチュアルな作品であった。

今回紹介する「Nippon-Jin Project」もまた、たかはしの個人的な作品だ。しかし、先ほど紹介した「内観の刻」とは取り組み方が180度異なり、写真に自らの作家性を込めず、ひたすら被写体である「彼らの写真」を写そうとしている。プロジェクト名からわかる通り、被写体は全員日本人だ。“10,000人”を目指して、ひたすら多種多様な日本人を撮り続けており、2016年1月時点の撮影人数は、約900人を数える。

日本人ってどんな人たち?
その質問に答えるプロジェクト

動機は単純なものだ。2012年に刊行された同プロジェクトの写真集、その前書きにこう記されている。

ニューヨークにいる仲間に、「今」の日本人を説明しようとしたことは何度もあります。しかし、自分自身がよく分かっていないことを、文化背景の違う人に説明などできるはずもなく……(中略)説明が出来ないのであれば、撮って、集めて、見てもらおう。説明するのではなく、沢山の日本人の写真から感じてもらおうと、日本人を撮り始めました。

これまで、日本/モスクワ/ニューヨーク/シドニー/シンガポール/台北などで「Nippon-Jin Project」の写真展を開催済みだ。1枚1枚じっくりと写真を見せる展示ではなく、壁面をたくさんの日本人写真で埋め尽くす構成。言葉ではなく、標本的に無数の写真を並べることで、「日本人とは何か?」という問いに答えようというわけだ。となれば、標本の数は多いほどいい。実際、たかはしはが目標とする数字は“10,000人”。まだまだ数が足りない。

彼は作品の完成を目指して、定期的に撮影会を開催しており、日本人なら誰でも無料で参加できるという。「世界で尊敬される日本人100人」の1人であるフォトグラファーに、無料でポートレイトを撮影してもらえる機会だ。参加しない手はないだろう。お気に入りのファッションに身を包む者、コスプレ姿でポージングする者、自慢のタトゥーを披露する者。撮影会に訪れる人は様々である。結婚式の衣装で訪れる夫婦や、ひ孫を含めた4世代家族など、複数人で撮影に臨む者も多い。撮影会は、原宿のゲッティ イメージズ ジャパン社で定期的に行われているので、興味がある方は、原宿へ遊びに行くついでに参加してみては。

たかはしじゅんいち

写真家・立木義浩氏に師事。1989年よりニューヨークと東京を拠点に活動。広告・音楽・ファッションまで幅広く展開。写真作家としての作品には、人間の精神性を肉体の中に視る「The Introspection内観の刻」、10,000人の日本人を撮り下ろすことを目的とする「Nippon-Jin Project」、ニューヨーカーの気配をFilmで撮るB&W「Afterimage」などがある。

REPORTER

RYUTA TOMIYAMA
r.c.o.inc.代表。好きな食べ物はナン。好きな女性は飯島愛。好きな言語はJavascript。座右の銘は「もうしょうがない人ねぇ」。

AUTHORITY
Nippon-Jin Project