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世代間のメリット・デメリットをもっと知りたかった(18歳・涼香さん)
7月10日の参院選当日に話を聞いたのは、今年高校を卒業したばかりの歯科助手、18歳の西垣内涼香(にしがいと りょうか)さん。自身でテクノレーベルを運営していた父の影響もあって、涼香さんはダンスミュージック寄りのバンド「HAUSUKA」としても活躍中だ。午前中に早々と投票を済ませてきたという彼女。ただし、誰に票を投じるかは最後まで決めあぐね、最終的には“投票所”で決めたという。
「ツイッターとかで、結構前から友達と“選挙どうする?”って話してたんですけど。ポスター見ても具体的な政策が書かれてないし、かといってウェブサイトは情報が多すぎて……」
もっと政策のことを知りたかったという涼香さん。ボイストレーニングを受けている先生に話を聞いたり、両親に話を聞いたりと、積極的に選挙へ参加しようとしていた。面白かったのは共産党ホームページへの感想だ。
「パッと見は若者向けなんです。“109のサイト”みたいな。でも “デコった”みたいな印象で。いざテレビで共産党の人を見ると、与党をディスってるオジサンが映っていて、サイトとのギャップが(笑)」
彼女のように、きちんと政治と向き合おうとしているZ世代にとって、情報を“デコる”ような小細工は不要なのだろう。しかしその涼香さんですら、論点がありすぎて焦点をしぼれなかったのが、今回の参院選だった。
「どの人・党も、子育て支援と介護とか、似たようなことを言ってるんです。でも、予算のことを考えたら、全部を同時に進めるのは無理って、私にもわかる。だからこの政策を進めたら、世代間でどんなメリット・デメリットがあるのかとか、そうしたことを知りたかったんですけど……」
次は、都知事選。「ネットでもっと情報がわかるようになっていてほしい」と語っていた涼香さんだが、彼女の願いは本校執筆時点、7月末になっても届いていないように思える。
期末試験に実家帰らないでしょ?(20歳・M君)/もっと考えて投票すれば(20歳・Yさん)
参院選から1週間後の7月17日。今年20歳を迎えた美大生2人に話を聞いた。群馬県出身・2年生のM君は、現在東京で一人暮らし。同じく2年生のYさんは神奈川県在住で実家暮らしだ。
「ボクは選挙に行ってません。群馬から住民票を移してないんで、このために一回実家へ帰るのはしんどい。選挙自体もあまり気にしてなかった。だって、参院選はちょうど期末試験期間でしたからね(笑)」
「私は期日前投票したけどね(笑)、姉と2人で。でも、きちんと考えて投票してきたのかと言われたら……、そうじゃない。ウチは叔父が県議会議員なんです。もちろん叔父さんのことは応援してるけど、叔父さんが所属している党を応援しているわけじゃない。もっと考えて投票すればよかったのかなと、いまは思いますね」
M君が抱える“地元と東京”のギャップは、東京に住む多くの若者に合致した現実だ。住民票を実家から移していない学生は多い。わざわざ、試験期間に里帰りしてまで地元選出の議員に興味を持てというのは、酷かもしれない。しかし、もし世間的に関心度の高い問題、例えばイギリスのEU独立を問う国民投票のようなものだったら、M君も投票したのだろうか。
「うーん。 “投票しないとマズイ”とか、“投票すれ何か変えられるかも”って本気で思えるようなことであればするでしょうけど、今はどんな問題も自分の一票で変わると思えない」
1週間前に話を聞いた涼香さんとは対照的な姿勢・態度。だが、多くのZ世代にとって納得できる感覚だろう。筆者に言わせれば、涼香さんとM君の大きな違いは、“働いて税金を納めている実感”の違いに映る。M君もバイトをしているとはいえ、就職して月給を稼ぐ涼香さんとは、税金の使い道に対するシビアさが違っていた。一方、涼香さん/M君/Yさん、3人の意見が一致した話題もある、舛添前都知事の政治資金公私混同疑惑への見解だ。
「ずるいと思ったけど、みんなやってることですよね(涼香さん)」
「政治家に限らず、偉い人、それができる人ならみんなやってるっしょ(M君)」
「お金に汚いのは良くないけど……。それより、きちんと仕事してくれることが大事(Yさん)」
「お金に汚い」ことよりも、「足の引っ張り合いばかりして、するべき仕事をしていない」ことに対する軽蔑を、3人から強く感じる答えだった。
民主主義を成立させるために
参院選当日の7月11日。筆者は中野区の開票所である中野区立中野体育館を訪れた。目的は、開票作業を見学することだ。選挙人名簿に名前が載っている地区の開票所であれば、住所・氏名を書くだけで簡単に開票作業を見学できる(写真撮影はNG)。区の職員などに加えてアルバイトも参加するということで、開票所にはさまざまな年代の人たちが集まっていた。掛け声とともに、全員で一心不乱に票を整え、読み取り機械にかけていく。その後は、間違いがないか、人間が目視でひたすら確認……。
なんてアナログなのかと拍子抜けした。しかし、さまざまな年代の、思想も信条も異なる人たちが、“選挙制度”を成立させるために必要な作業を黙々と行う姿には、“民主主義の原点”のような、何か力強いものも感じた。
本校執筆時点で、都知事が誰になるかはわからない。東京の選択は果たして、そして投票率は……。そう、投票率は“民主主義”に対する支持率なのだ。せめて、投票率が高くあったことを祈りたい。