この記事の初出はウェブメディア「Z TOKYO(2019年1月にサイト運営終了)」です。同メディア運営会社からの権利譲渡及び取材元からの掲載許諾を受けて当サイトに転載しています。

焼き物。もしくは陶磁器。アーティスト・林茂樹が生み出す作品を、そうした一般名称で呼ぶのは難しい。「最近注目の陶芸作品なんだけど」といって林の作品を紹介されたら、たいていの人は面食らうだろう。

林茂樹が一貫して扱っている素材は”磁器”だ。自ら石膏型を制作し、鋳込みによって複数のパーツを製造。それらを組み合わせて彼独自の作品世界を作り出す。このSF的な作品群が、「土をこね、形作り、焼く」という、伝統的な技法で生み出されていることに興奮を覚える。

今年の3月23日-4月11日まで、高島屋日本橋店で開催されていた「林茂樹展 UNFOLDED CERAMICS」で、彼の作品を間近に鑑賞する機会を得た。展示されていたのは、新作「deva device“GR-D”」。微笑を携えているようにも、意を決しているかのようにも見える表情の少年が、羽のついたウェアとベルトを身に着けている。

このウェア。光沢の美しさと造形の巧みさが相まって、磁器ではなく「未知の物質?」とすら思える。そして、細部まで目を凝らして鑑賞しているうちに……、触りたい欲求が高まっていった(笑)。当然、接触は厳禁だ。触れることはなかったが、自分でも不思議なほどにこみあげてくる欲求だった。

巧みな技とユニークで綿密なSF設定から生まれる唯一無二の世界

ルーツはシンプル。彼の生まれた岐阜県土岐市は、陶磁器生産日本一の街だ。小さいころから焼き物を見て育ったが、当時は陶磁器に対し特に魅力を感じてはいなかったようだ。しかし、大学時代、陶芸作家・深見陶治の作品と出会い強い衝撃を受ける。彼は、導かれるまま、この道へ進むことを決めた。

大学卒業後に2年間、陶磁器の高度教育で知られる多治見工業高校の専攻科で学ぶ。その後はアルバイトや母校での講師を務めながら作品作りを進め、注目を浴びたのは30歳を過ぎた頃。初めてSFモチーフを取り入れた作品「KAGUYA-SYSTEM」が、神戸の現代アートギャラリーの目に留まる。その後「Q.P」「Koz-o」「OO」とSFシリーズの発表は続き、徐々に国内だけでなく世界から注目を集めていった。

ウェブサイトから引用すれば、「KAGUYA-SYSTEM」は「月から地球へ幼児を運ぶための装置で、幼児用大気圏突入ポッド」なのだそうだ。こうした、彼独特のユニークなSF設定にも舌を巻く。個展「UNFOLDED CERAMICS」に展示されていた作品も同様である。

「胸のインテークから空気を吸い込み、中のコンバーターで水分と酸素を特殊プラズマ化し……」

「(と、まあ、あくまで空想上の話ですが)」と、軽妙にまとめられてはいたが、個展では長い解説が加えられていた。その空想力と、それを具体化する力に驚かされる。「林茂樹展 UNFOLDED CERAMICS」は、7月13日-7月25日に高島屋新宿店で、8月3日-16日に高島屋大阪店で、再び開催予定。ぜひ会場へ足を運んでもらいたい。

林茂樹(はやし しげき)

1972年岐阜県生まれ。陶造形作家。大学卒業後、改めて多治見工業高校陶磁科学芸術専攻科へ入学。
第8回国際陶磁器展美濃銅賞・美濃賞、「誰でもピカソ」アートバトル優勝、第57回ファエンツァ国際陶芸展大賞(伊)ほか、国内外で受賞歴多数。V&A美術館(英)に作品収蔵。

REPORTER

RYUTA TOMIYAMA
r.c.o.inc.代表。好きな食べ物はナン。好きな女性は飯島愛。好きな言語はJavascript。座右の銘は「もうしょうがない人ねぇ」。

PHOTOGRAPHER
Junichi Takahashi, Katsura Endo